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果てのない海に呑まれて
第21章 寄せては返す–––
「だが」
ミゲルは呆れたように笑った
「あいつは一度も俺の言うことを聞かなかったな」
「え……?」
リリアの方に顔を戻し、真っ直ぐに彼女を見る
「信用しない者に武器を持たせたりはしない。敵地に連れて行くこともない。あいつがまたあんな顔を見せるようになったのは、お前が来てからだ。
だからこそ……もうこれ以上、あいつに心配を掛けるな。お前に何かあったら宥めるのは骨が折れそうだ」
逸らすことの出来ないその瞳に、リリアは気付いた
ミゲルは表情も言い方もキツイ
だがそれは、何よりレオンのことを考えているからなのだ
「…ごめんなさい……」
「いや、いい。とにかく今日のことは悪かった。
それでも俺はまだお前のことを信じるとは言えない」
「ええ、分かってる……」
リリアの言葉を聞くと、ミゲルはそれ以上何も言わず奥の暗がりへと消えていったーーー