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果てのない海に呑まれて
第21章 寄せては返す–––
“レオンに……”
謝らなくては、と思った
言い付けを破って心配を掛けたこと。
自分を信じる彼のことを、少しでも疑ったことーーー。
「ミゲルの説教はたまにものすごく染みるよな」
「…っ!…レオン……」
レオンは海の方を向いたまま続ける
「私が怒っていると思ったか?」
「……」
「いや、いい……実際怒っていた。港でああ言ったのに、また無茶をと」
「…ごめんなさい……」
「……リリア。海とは不思議なものだな」
「え……?」
訊き返したリリアに、レオンはちょいちょいと指を曲げて傍に来るよう合図した
近付けば、レオンが見ていたのは遠い海の彼方ではなく、月明かりにキラキラと光る真下の水面だった
「……皿や瓶に水を張っても、波は立たない。だが海には、波がある。何故神は海を揺らすのか……何故海は此処まで人を翻弄するのか?」
リリアはゆっくりと首を横に振った
「幼い頃、波が嫌いだった。近付く波を捕らえようと追い掛ければ、波は逃げてゆく。思い通りにならないのが腹立たしかった」
レオンは子供の頃の自分を思い出して小さく笑う