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果てのない海に呑まれて
第22章 移ろいゆく薔薇の中で
「おい、何をしている!」
レオンの怒鳴り声が聞こえたかと思うと、二人の間に影が入り思いっきり引き剥がした
弾みでジェーニオが川の中に倒れ込む
「……何のつもりだ」
それを助け起す気配もなく、レオンはジェーニオの前に立って彼を見下ろした
「……別に」
「何の理由もなくリリアに危害を加えたと?」
「どうせ何を言ったところで無駄でしょう。兄上はそういう人だ。昔から。
……その兄上の身勝手さが、フェリペ兄上を殺したんだ」
「何……?」
レオンは眉を顰め、立ち上がって去ろうとするジェーニオの腕を掴んだ
「どういう意味だ」
「放して下さい。分からないなら、わざわざ説明して差し上げる義理なんてない」
「ジェーニオ……!」
「放せ…っ……!」
怒鳴り声と共に兄の腕を振り解く
「帰ります……大学もありますから」
感情を抑えきれていない声でそう言うと、ジェーニオは濡れた服に舌打ちしながら馬車のある小屋の方と去っていった