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果てのない海に呑まれて
第26章 歪んだ憧憬
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「彼女に随分なことを仰ったようで」
「……ジェーン」
帰って早々、見たくもない顔だ
「品もなく大声でミゲルを呼ばわって文句を言ってましたよ」
「お前には関係のないことだ」
「ええ、全くその通りです」
ジェーニオはクッと掴み所のない笑みを浮かべた
「でも彼女は、どうでしょうね」
「……?」
「いつも兄上を見ていますよ。あの丘の、上から」
「…っ……」
弟の指差す方向に、レオンの顔がはっきりと強張る
「また同じことを繰り返すおつもりですか?
いや……同じではないか」
今日のジェーニオはまた随分と突っかかってくる
「怖いですか? 彼女に“彼ら”との関係が暴露るのが」
レオンの目が大きく見開く
「お前、何故それを……」
「馬鹿にしないで下さいよ。僕が気付かないとでも?
あの時期にシエラから連れて来られた孤児……あんな尊大な孤児がいるわけもない。彼女が“ギスタール”の身内であることは誰だって分かりますよ」
「……」