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果てのない海に呑まれて
第26章 歪んだ憧憬



「シエラに行くのね!」



クリスの船が見えなくなった頃、リリアが弾んだ声を上げた



「お前は行かない」

「……え?」

「お前は留守番だ。私が戻るまで、ここで大人しく待っていろ」



レオンはあやすようにリリアの頭をポンポンと撫でた

が、リリアは思わずその手を退け彼を睨み付ける



「どういう意味」

「そのままだ」

「どうして私は行っちゃだめなのよ!」

「どうしてもだ」

「レオン!」

「口説いぞ!」



頭ごなしに怒鳴られ、リリアはハッと息を呑む



「……」



レオンは思わずしまったと気まずそうな顔をしたが、謝るどころか何も言わない



「……そう。いいわ。

どうぞご自由に!」

「あ、おい!」



リリアは共に乗ってきたレオンの愛馬、ラオフェンに跨るとかつてでは考えられないほど容易く彼を御し一人で屋敷に帰ってしまった



「……歩いて帰れ、ということか」



仕方がない

自分がしているのは、彼女の願いを踏み躙る行為なのだからーーー。






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