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果てのない海に呑まれて
第26章 歪んだ憧憬



「ジェーニオ様、どちらにいらっしゃったんです!?」

「どこという訳でもありません。少し散歩を」

「今日のお勉強はもう終わったのでしょうね?

貴方はあの女の子供とは違うということ、父上にしっかり示さなくてはいけませんよ」



ーーーこの女が、嫌いだ



「貴方の肩に掛かっているのはファルツの行く末だけではありません。わたくしの実家であるウェッツェル家の存亡も……」



くだらない矜持の為に足掻く、醜い女。



「ああ、いつか貴方にも見せてあげたい……あの旧く美しい街…煌びやかな我が邸……」



こんなのが自分の母親とはーーー。





「……」

「ジェーニオ様! 聞いていらっしゃいますか!」



視線を外しぼんやりと壁を見つめていたジェーニオはゆっくりとカタリナの方に顔を戻した



「ええ、もちろんです。母上」



そうしてにっこりと微笑むその顔は、レオンに向けるものなどより遥かに冷たく凍りついていてーーー。


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