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果てのない海に呑まれて
第26章 歪んだ憧憬
「リリア」
兄があの女に視線を向ける度に湧き上がる、このドロドロとした感情は。
彼女への嫉妬と、自分への嫌悪。
ただ近付きたいだけだった
ただ兄の隣に立ちたかった
ジェーニオにとって二人の兄は大きく、そして遠かった
“兄上は…勝手だ……”
己れの欲するものを求め、手に入らないと嘆く
求められることそれ自体、恵まれているとも気付かずに。
レオンは多くを喪った
だがそれは彼自身の選んだ結果だ
求めることすら赦されない自分はーーー。
選ばれることすらなかった自分はーーー。
「ジェーニオ様」
「なんですか、母上」
「必ずこのファルツをその手に……母に」
「……お望みのままに」