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果てのない海に呑まれて
第27章 愛故に。



「……駄目だ」

「どうして!? 私も兄上と他の土地へ行ってみたいわ!」

「危険過ぎる」

「そん……ケホッケホッ」



突然に咽せたフローラにレオンはガタンと音を立てて立ち上がった



「まだ風邪が治っていないのか。早く休め」

「このくらい大丈夫……」

「馬鹿、こんなに身体を熱くして何言ってる」



そう言うとヒョイと彼女を抱きかかえる

まだ十一歳のフローラは彼にとって軽過ぎるものだった



「慣れてるもの」

「ハァ...熱に慣れるほど体の弱い女を航海に連れ出せるわけがないだろう」

「……嘘。やっぱり慣れてない」

「今更だ」



優しく微笑んでベッドに寝かせてやる





“…兄上……”



もうーーーそんなに寂しそうな笑顔しか出来ないの?







「……私、諦めないわよ」



部屋から出て行く兄の背中に、フローラははっきりとそう告げた



「……明朝発つ。見送りはいいからゆっくり休めよ」

「……」

「ハァ...戻ったら一日くらいは乗せてやるから」



その瞬間、パッと顔を輝かせる妹。

当時のレオンにとってはそれだけがたった一つの幸せだったーーー


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