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果てのない海に呑まれて
第28章 天乱る〈ソラミダル〉
「……」
「とりあえず下に干しておいてくれ」
腕を捲り働く船員たちを手伝いに走る船長
人使いがいいのか悪いのか
ミゲルは軽くため息をつきながら下甲板へと降りて行った
カタン...
積み荷の一つに寄りかかりながら顔を仰ぐ
「……っ」
そして震える唇を抑えるように手の甲を強く押し付けた
ーーー寒さのせいではない
‘リリア!’
何故
あの時俺はあいつの名前を呼んだ?
いや、それ以前に
マストから顔を見せたあいつに感じた不自然な鼓動はなんだ?
‘今は彼女自身に惚れてるってことなのかな?’
いつかのジェーニオの言葉が思い出される
「ハ……まさか…な……」
あり得ないと言うように口元を歪める
それでいて彼の目は手の中に収められた彼女の衣服に落とされていた
「……ッ」
自然と喉が音を立てる
おかしい
前はこんなではなかったはずだーーー