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果てのない海に呑まれて
第31章 交錯
同じ頃、レオンはとある男と向かい合っていた
机の反対側に座るその男、年はレオンより少し上くらいか
優しげな笑みを浮かべてはいるが、豊かな金髪の間から翠色の瞳が油断なく覗いている
右側から見れば美しい顔を持つ彼の顔は–––左の頬に深い傷があり、引き攣った口元が恐ろしい
「久し振りだな、レオン。また会えて嬉しいよ」
「そうだな」
彼こそが此処シエラの現支配者–––
カレル・フォン・サラディだった
「一年ぶりか……その後どうだ」
「うん、順調だよ。シエラは良い人ばっかりだ。
誰もサラディ家に逆らおうとなんてしなかったからね」
「……」
レオンが何も言わないでいる間に、召使いが飲み物を運んで来た
浅黒い肌をしたその男にレオンはちらりと視線を向ける
「とりあえず座ってミード(蜂蜜酒)でもどう?」
「いや、遠慮する」
「あ、もしかしてあのケチュア人が気になるのかな?
大丈夫、運んできたのは彼だけど作っているのはサラディ家直属の人間だから」
「そういうわけではないが……」
なお断りを入れてくるレオンに、カレルの目がスッと細まる
「……じゃあ、何?」