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果てのない海に呑まれて
第32章 そしてまた一人
「これからどうなさるおつもりですか?」
「どうも何も、仕事を終えたらアウスグライヒに帰る。それだけだ」
「なん……っ!?」
ルチアーノへの返答に思わず声をあげたのはミゲルだ
「置いていくつもりなのか?……あいつを」
「お前には余計な気を回させて悪かったな。はじめからそのつもりだったんだ。
シエラに来たらリリアを手放すと」
月のない道、星明かりだけでは彼の表情を確かめるには不十分で。
「いや、その気はなくともそうせざるを得ないだろうと感じていた……抗えなかったな」
それ以上は押し黙ったまま、ミゲルにはその声色さえ窺うことは出来なかった–––。