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果てのない海に呑まれて
第32章 そしてまた一人
「この……っ」
「もうやめて」
強く拳を握り締めたリーを、リリアが小さくだがはっきりと引き留めた
“私の為にリーが仲間を裏切る?”
そんなこと、あって良いはずがない
「私はとっくの昔に全てを失った。そんな私を受け入れてくれるというなら、ファルツだろうがサラディだろうがついて行くわ」
静かにギスタールの剣《ツルギ》を置き、カレルの元へと歩み寄る
「リリア、君がそんなことをする必要はないんだ!」
「リー…私は変わったのよ。自分の道は自分で切り拓くの」
そう言って振り向いたリリアの顔には、力強く輝く笑顔。
「美人なだけでなく強く賢い……気に入ったよリリア。
おいで、僕の一番お気に入りの部屋をあてがってあげるよ」
「はい、カレル様」
「カレルでいい」
先ほどまでと打って変わって優しい–––いや、満足気な声で言うと、カレルは立ち尽くすリーに向かって告げた
「今日はもう帰っていいよ。
今後のこと……良い返事を待ってるからね」