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果てのない海に呑まれて
第32章 そしてまた一人
「自分を裏切った人間の死がそんなに悲しいか?
なら教えてやろう……お前の仲間も、ここにいるケチュア人たちも、そしてこの娘の命も。
全てはお前に委ねられているんだ」
「…っ……」
「お前はただ一言、これからはサラディ家に仕えると同胞に伝えれば良い。そうすればリリアには手を出さずにおいてやる。
もし断れば……うん、彼女を使って脅すだけだ」
微笑みながら、それでも床に出来た血溜まりが男の言葉の嘘でないことを証明している
「もちろん僕についてくれれば悪いようにはしない」
「ハ……それを信用しろと? 大方俺たちにあのファルツの奴らと同じことをさせる気だろう!
あの残虐な海賊行為を!」
リーの叫びにリリアがピクリと反応した
「さぁ、それは状況次第だけど。
でもそうだとして一体何の問題が? もともと野蛮な貴様らが野蛮な行為に手を染めたところで、誰も咎めたりしないよ」