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果てのない海に呑まれて
第32章 そしてまた一人
ブリジッタの父は、貴族であるウェッツェル家当主
地元では言わずと知れた旧家だったが、世間的にはただの没落貴族に過ぎなかった
再興をかけた父は、当時急速に力を持ち始め皇帝からのお墨付きも受けたファルツ家に妹を嫁がせる
だがカタリナを初めとするウェッツェル家の女たちはプライドが許さなかった
「ああ本当、天使のように可愛い子ね!」
ブリジッタの母、タチアナは幼い頃からカレルに目を付けていた
カレルの家はウェッツェル家の土地を管理するいわゆる農奴のまとめ役だった
生活的には潤っているものの、所詮は農民、田舎者。
教養などあったものではなかった
「いいのよ、そんなものは後付け。とにかく皇帝の前でちゃんとご挨拶出来れば良いの。
陛下は美少年が大好きなんだから……」
当時流行ったそんな噂を間に受けて、タチアナは十三歳のカレルを引き取った