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果てのない海に呑まれて
第33章 傍に居たい人
「おい」
突然の呼び掛けにブリジッタはビクリと肩を震わせた
「何泣いてる」
「え……」
呆れながらもそう問い掛けるカレルに目を見開く
今まで自分のことを尋ねてくれたことなど一度も–––
「ますます醜いな。見ていたくもない」
「……」
いや、問い掛けなどであるはずがなかった
いつもと変わらない、ただの独り言。
「さっさとその顔を最低限直して、リリアのところまで湯を運べ」
「……? それってどういう……」
「察しの悪い女だな。下女が足りないからお前が代わりに彼女の湯浴みを手伝えと言っているんだ」
「あ、はい……ごめんなさい」
大きく舌打ちをされ、ブリジッタは慌てて立ち上がると俯いたまま廊下へと走り出て行った
“不細工で役立たずで邪魔な女だけど……ウェッツェル家の後ろ盾を失わないためにも我慢しなきゃいけないよね”
カレルは大きくため息を吐き、ブリジッタの鏡台を苛々と蹴飛ばした–––