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果てのない海に呑まれて
第33章 傍に居たい人
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「……前、ぶつかるよ」
ハッと気がつくと、目の前に現れた柱に思わず桶を落としそうになる
「貴女はいつも下を向いていますね」
「リー様! 失礼致しました!」
夫の交渉相手にブリジッタは慌てて頭を下げる
「それ、リリアのところに運ぶんですか? 何故貴女がこんな仕事を?」
「…下女が足りないので……」
「……」
その言葉にリーは呆れたような哀れむような目を向けた
この屋敷で、カレルに次ぐ権威を持つはずの彼女が召使いを連れているところなど見たことがない
その扱いはたとえ敵の妻であっても冷徹な対処を躊躇うものだった
「ここから逃れようとは思わないのか」
「……!」
思いがけない質問にブリジッタは濁った目をじっとリーに向けた
「……私が」
そしてゆっくりと口を開く