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果てのない海に呑まれて
第34章 退けない現実



「ああ、そうだ。そして同時に分かっていたはずだ。俺たちにそれが出来ないことを。

俺に……それが出来ないことを」

「私が洗脳でもしていたみたいな言い方だな……辛かったのか? 私に使われるのが。

だが今の私からなら逃れられるだろう。帰ればいい、お前が本当に仕えたい場所に」

「……っ」



肩を掴むミゲルの手にさらに力がこもる



「ファルツにか?……だとしたらその時はお前も一緒だ。

言っただろう、赦さないと。逃げたいのはお前の方だろう。だがお前には責任があるんだよ。お前が誑かした全ての人間に対する責任が!」



そのままレオンを無理やり立たせると、硬い長椅子に押し倒す



「……っ!」



多少の抵抗は試みたものの力の入らない体はなすすべも無く叩きつけられた



「そのままそこで少し眠っていろ。俺はサラディ家に用がある」

「ファルツの仕事、か……お前はいつも変わらないな」



その言葉に服を整えていたミゲルはピタリとその手を止め–––


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