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果てのない海に呑まれて
第34章 退けない現実
「……っ」
自分で突き放しておいて、何故こんなにも苦しい
だが兄が残したファルツと、リリアと。
二つを救うためにはこれしかなかった
「……本当は、もうどうでも良いくせにな」
ファルツのことなど、何一つ慮っていないのに。
「ミゲル、今の私に食わせたころで体が吐き出すだけだぞ」
傷つけるつもりはなかった
傷つかず憎むくらいに置き去りにしたはずなのに。
憎まれた方が、楽–––
「自分だけ楽になるつもりか」
「グッ!?」
レオンの口に何か湿っぽいものが突っ込まれた
「赦さない……!」
スープに浸し柔らかくなったパンを強引にねじ込むミゲルの眸は怒りに燃えていて。
「今のお前を見たら皆離れていくだろうな」
「…ゲホッ」
レオンはその手を振り払うと苦しげにパンを吐き出した
そして口の端を拭うと、
「そうしたければすれば良い……前にも…言ったはずだ。私は一度も……お前たちに命じたことなど…ない」
少し力を出しただけでひどい目眩が襲う
ミゲルは倒れこみそうになるレオンを乱暴に支えた