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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い



「おい」



広場の曲がり角、邸へと戻る道に入ろうとしていたミゲルは、警戒しながら足を止めた

一本前の暗がりからケチュア人が様子を窺っているのは分かっていたのだ

だから速足でやり過ごそうとしたのだが、声を掛けられてしまっては仕方がない



「……誰だ」



カレルか、リーか。

どちらの手下かが最初の問題であり、しかもどちらの手下でも問題だ



「長からの伝言を伝えに来た」

「その“長”という言い方をやめろ。俺たちはそれで一度騙されている。

まぁ、言ったところで信用する気もないがな」

「……リーだ」



ミゲルは何も答えなかった

言葉通り、口だけでは何とでも言える



「なら尚更話を聞くつもりはない」



これ以上サラディとの関係を悪くするわけにはいかない

今ケチュア人たちと関わり合いになるのは得策ではないし、カレルの手先が嘘をついて出方を見ているとも限らなかった


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