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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
「リリアのことでもか?」
「!?」
突然背後から声を掛けられ、ミゲルはビクリと振り返った
まさかそんなことが–––
「……本人登場、か」
自分が気配を全く察せなかった
やはりこの男、只者ではない
「そう、これなら信用出来るはずだ」
リーは先程までとは打って変わって高圧的な態度だ
笑みのないその顔には有無を言わさない何かがある
ミゲルはまるで飢えた獣と対峙しているような感覚がした
「さぁ……お前達とサラディ家が本当に仲が悪いのか、まだ測りきれてないからな」
「俺達がそのフリをして騙すと?
ファルツ家の情報網は信頼出来るだろうに……噂通り本当に疑り深い男だな」
リーは溜め息を吐きつつも、ミゲルに対する評価は逆に上がっていた
この男なら、簡単に裏切りはしないだろう。
「ああ。だから今この場での出来事はなかったことにさせてもらう」
ミゲルがそう言って押し通ろうとした時、リーが小さく呟いた