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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
ミゲルは思わず小さく漏らした声に慌てて口を押さえた
「ですが私は本来フェリペ様の側付きで……あの方のお許しがないことには…」
「お前はフェリペの側付きである以前にファルツ家に雇われた孤児。その当主が邸を留守にしている今、管理権は私にあります」
「……」
そう言われてしまうともう何も返せない
だがどうしても素直に頷くことが出来なかった
何かが引っかかる–––
「……ハァ、本当にお前達ケチュア人は頭が悪く忠誠心のない野蛮人だこと」
ミゲルの態度に苛立ったカタリナは思い切り嫌味を言い放つが、そんなことで逆上する彼ではない
何も言わずにただじっと次の言葉を待つ
「お前にはこれから別の屋敷に行ってもらいます。ここより更に西の大貴族……お前の母が仕えていた家だそうですよ」
「……!」
母を弄び、捨てた父
母が死んだ元凶
そんな人間のいる場所へ、戻れと–––?