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果てのない海に呑まれて
第38章 為すべきことを成せ
日射しも届かない狭い部屋の中に、立ち込める生臭い匂い。
普段はせいぜい魚を捌いた時くらいにしか嗅がないその匂いは、それよりずっと強烈に鼻を刺激してくる
「深いな……俺たちが使うような武器じゃない」
ミゲルは目の前の死体を調べながら冷静にそう言った
だが心の中は怒りで満ちている
”まさかここまで侵入してくるなんてな……”
仲間を殺され、皆血走った眼で次の言葉を待つ
「それじゃやっぱりケチュア人が?」
そのうち一人が痺れを切らしてそう尋ねた
「それはまだ分からない……」
「分からないって! だってこの切り口はどう見たって奴らのエモノだろ! オレは取引で何回も見てんだぜ!」
「そうだ! あの独特の形……あんな太くて分厚い剣振り回せるのはそういねぇ! まして一太刀なんて相当使い込んでなきゃな!」
「だとしても!」
ミゲルは周囲が黙るようあえて大声で遮った