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果てのない海に呑まれて
第39章 孤独な口付け



"随分と舐められたものだな"



カレルは舌打ちしながら廊下を歩いていた

擦れ違う使用人はいつも以上に怯えながら脇に避け、慌ててお辞儀をする

そのおどおどとした態度が余計に彼を苛立たせていた



「リリア、入るぞ」



目当ての扉の前までくると、居るかどうかの確認も、彼女の返事さえ待たぬままカレルは部屋に入った



「……っ」



ブリジッタがサッと立ち上がり、リリアの傍から離れる



「不細工が……さっさとオレの前から消えろ!」

「申し訳ありません!」



すぐに顔を手で覆い、俯きながら小走りに部屋を出ていく

その様子を、リリアは何も言わずただ目で追っていた





「……ようやく髪を上げたか」

「ええ」



その返事は落ち着いていて、カレルが首筋に触れても静かに受け入れている



「この方が良い……」



露になった首筋を撫でながら後ろに回り、耳元に口を近付けるカレル



「……何故そんなに不機嫌なの?」



興奮しているのは女を求めてのことではないと、リリアは分かっていた


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