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果てのない海に呑まれて
第40章 冷たい肌
喉を突こうと腕を伸ばしたリリアの耳に、二つの声が届いた
「なっ……!?」
大きな音と共に跳ね開けられた扉に目をやり、カレルもリリアも固まってしまう
「何やってる! 行くぞ!」
その間にミゲルがリリアの手を掴み、部屋の外へと連れ出した
短剣が床に落ちる音が響く
「待て、ミゲル! リー! 貴様らオレを……ウェッツェルを裏切るのか!」
走り去る二人を守るようにリーがカレルの前に立ち塞がった
手には太く長い剣が握られている
「裏切るも何も、俺たちは初めからお前の味方じゃない」
冷たく言い放ったリーだが、ふとその目が柔らかく緩んだ
「それでもお前の味方が全くいないわけじゃない」
共に来るか–––
カレルの居場所を教えながら、再びそう尋ねたリーにブリジッタは頷かなかった
たとえ振り向いて貰えなくても、あの人を守れるならそれでいい