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果てのない海に呑まれて
第40章 冷たい肌
「その想いを無下にはしたくない」
リーはそれだけ告げるとカレルに背を向けた
「……さない」
それでも、それがカレルに伝わることはなかった
「ユルサナイッ!」
「いっ……!」
「リー!」
心配して思わず後ろを見やったリリアの目に、その光景が映った
「何が違う……オレと、お前たちと…一体何が違うっていうんだ!」
緩く結んだ長髪が仇〈アダ〉になった
必死になってそれを掴んだカレルが、リリアが落とした剣をリーに突き立てようとしている
「……っ」
リーはすぐさま腰に付けていた自分の短剣を引き抜くと、それを逆手に持ち変える
「本当にお前は……最後までケチュア人の誇りを汚してくれる……!」
彼の声が震え、手が震える
「…っ……」
その手が覚悟を決めたように強く握られ、次の瞬間、彼はカレルの手から逃れていた