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果てのない海に呑まれて
第40章 冷たい肌
「ついたよ」
「ええ……」
しばらく走らせていた馬の脚を緩め、リーが腕の中のリリアにそう伝えた
緑豊かな草原を抜け、丘の下にはケチュア人達のテントが見える
既に若長の帰還に気が付いた何人かがそこで待っているようだった
「今帰った」
リーがそう告げると、皆口々にお帰りと出迎える
彼の威厳は変わらずだが、その家族のような温かさにリリアは思わずフッと微笑んだ
「……?」
しかしそんな安堵も束の間、訝しげな視線を感じて眉根を寄せる
こいつらは誰だと、何人かがチラチラと此方を窺っていた
“この感じ、前にもあった……”
ちょうど一年前、レオンに連れ去られてファルツ家に来た時だ
でも何故だろう
どこか嫌な感じがする–––
「リリア、降りられるか」
「あ…ええ」
そんなことに気を取られていたリリアは、リーに言われて慌てて馬を降りようとする