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果てのない海に呑まれて
第40章 冷たい肌
“俺は臆病者だ……”
それでも、このくらいなら許されるだろうか–––
「リリア……」
眠る彼女の手に自分の手を重ね、ずっと結い上げられたままだった髪を解く
「やっぱりこの方が似合うな……」
その覚悟がどれ程のものかミゲルにはよく分かっている
顔に掛かった髪を払いリリアの頬をそっと撫でた
「まだ冷たい……そんなにアイツが恋しいか」
自分やリーがどんなに守ってやっても、お前の心を埋めることは出来ないのか–––
「……っ」
グッと奥歯を噛みしめる
生まれて初めて、レオンを疎ましく思ったかもしれない
「あいつは甘ったれで臆病で……その上お前を危険に晒したんだぞ」
低い声でリリアに呼び掛ける
もちろん、彼女がそれで目を覚ますことはなかった
“それでも……”
お前があいつと過ごして強くなったように
あいつがあんな姿を見せるようになったのは
お前の存在があったからだろう
「自分の為に勝ち目のない闘いをするのは愚かだからな……」
ミゲルはゆっくりと手を離し、やはり奪うことの出来ない自分を嗤った