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果てのない海に呑まれて
第41章 信じるもの
「それでも譲れないものがある」
静かな声に、皆がハッと顔を上げた
静かだが、よく通る声だ
「男の哀しい性〈サガ〉だな」
リーが男達の後ろから現れると、誰もが直ぐに一歩退く
自然出来て行く道をミゲルの方まで進んだ
「信じるものの為には退くことを知らない。
君は自分と主人の為、俺たちは俺たちの為に」
そしてリリアの為に–––
二人の間にその言葉はなかったが。
「同じ血を持って、同じ誇りを持っていても、違う。何百年と受け継がれてきたもの……君はそれを知らない。
違うこと自体を責めはしない。だが誇りのために闘うことをやめろと言うのならそれは俺たち自身を否定したことになる」
目の前に立つと、リーの方がミゲルよりも僅かに背が高い
「……分かってくれるね?」
見下ろしても見下すような視線はない
「……ああ。もう何も言わない」