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果てのない海に呑まれて
第41章 信じるもの
ミゲルは一人一人を真っ直ぐに見ていた
脅すような眸ではない
諭すような–––望むような眸だ
「血も、何もかも全てが俺だ。俺は俺自身に縛られたりしない。
俺は蛮族じゃない……」
自分だけを信じる彼の、これが精一杯の血族への想い。
「ケチュア人は、蛮族じゃない。それはお前達自身がよく分かっているはずだ。
誰かにそれを示す必要がどこにある?
誇りを傷付けられないように、身を縮める必要がどこにある?」
最後に、此処にはいない誰かを想うようにミゲルの眸は遠くなった
「俺は自分に誇りを、そしてそれを教えてくれた奴に忠誠を……ただそれだけだ」
それ以上は何もなかった
誰も、何も言わない
唇を噛み、じっと下を見つめる者
何かを考えるように顔を顰める者
彼の言葉は伝わった
だがまだ
誰一人それに同調する者はない–––