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果てのない海に呑まれて
第42章 真白き馬



横を向くと、目が合って首を横に振られる



「こいつがそれを考えなかったと思うか?」

「…っ……」



そうだ

誰よりも誇り高く、仲間を想う彼が–––



「女には分からないか?

命よりも名誉と誇りなんて、下らない意地だと思うか?」

「ま、男はみんな馬鹿だからな」



リーは軽い口調でそう言って笑った



「ごめんなさい…そんなつもりじゃ……」

「いや、いいんだよ。

でもこれだけは……君を傷付けられた憤りってものだけは理解してほしいかな。

君を愛する男の最後の願いだよ」

「リー……!」



言葉は優しい

でもさっきよりもずっと、リリアの胸を締め付ける



“泣いちゃだめ……”



ここで自分が泣けば、リーはきっと抱き締めてくれる

自分がどれだけ傷んでも。

分かっているから、甘えてはいけない–––







「レオンも……」



リリアの赤くなっていく眸を見つめ、リーは慰めるための言葉を紡ぐ

抱き締めてやることは、叶わないから。


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