この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第45章 全てお前の為
ククゥと腹が小さな音を立てる
「……おなかすいた」
俺の頭には、それしかなかった
「……」
母に待っているよう言われた暗がりはとても怖くて、汚い道の上に膝を抱えて縮こまる
すぐ横は明るく賑わっているのに、どうしてもそこには入れない
右側は奥に行くほど暗さを増し、何かがそこから現れそうで–––
“いつか俺も……あそこに行くのかな”
呑まれてしまいそうで目を背ける
「ミゲル」
その中から姿を現したのは、ぼろぼろの女だった
一瞬ビクリと体が震えるが、直ぐに相手を認識して手を伸ばす
「…母さん……」
「待たせてごめんね……お腹すいたでしょ」
コクリと頷けば目の前にパンが差し出される
俺はあちこち傷だらけの母のことなど気にも止めず、ただ目の前の食糧を夢中で貪っていた
******************************