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果てのない海に呑まれて
第49章 番外編 光と影
「お前はまた……勝手なことをしてくれたな!」
「……」
「良いか、古参だからと威張っているのかもしれないが、この店での古参は使い物にならないのと同じことだからな!」
何も答えないヘレーネに店主はうんざりして出て行った
「ろくに客もつかない年増が」
そんな捨てゼリフを残して。
「アンタ頭良いんだからさ、もっと上手く立ち回りなよ」
仲間の娼婦が窓際に座る彼女を諭す
「嫌な客から若い子たち守るのもあたしらの役目でしょ。客が減ったなら余計に」
「……やっぱり馬鹿だわ、アンタ」
何を言っても無駄だと思ったのか、それ以上言及されることはなかった
「……」
ヘレーネはただ黙って夕暮れの海を眺めている
海岸には何隻もの船–––その中には、薔薇の紋章を持つものもあるはず。
先ほど彼女のもとを訪れたその客を追い返したことで彼女は叱責を受けたのだ
「ヘレーネ、大丈夫だと思うけど、あんま入れ込んじゃだめだよ」
彼女の様子を見て、友人が再び声を掛けた