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果てのない海に呑まれて
第8章 還らない者
レオンは指示を終えるとミゲルに背を向け自分の書斎へと足を踏み出した
「あ」
一歩行ってからふと思い出したように声を上げくるりと振り返る
「まだ何かあるのか」
ミゲルは苦笑した
「昨日ふと思ったんだが、お前まさかフローラのことが……」
「……フローラ様がなんだ」
唐突過ぎる質問にも関わらずミゲルは冷静に聞き返したが、その無表情の中にレオンは何かを読み取った
「お前はやたら私がリリアをフローラになぞらえていると言うが、それは本当はお前の方ではないのか?」
「……」
黙ったままのミゲルの様子を少し見ると、レオンは何も言わずにその場を後にした
ミゲルの体には僅かに力が入り、その手は強く握られている
「……お前のそういう勘の良いところも気に入らないっ」