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潮騒
第14章 終戦 ー崩れ波ー
その年の暮れあたりから、米国による爆撃が開始される。

年が明けるとより回数が増え、三月あたりには東京も神戸も焼け野原になったと聞いた。

菊乃の郷である田舎は、人も少なく、何かしら軍備に関する工場があるわけでもない。
米国にとって焼く価値もないと見え、焼夷弾が落ちてくることはなかったが、それでも沢山の爆弾を積んだ敵機が頭上を飛んで行く様は恐ろしかった。

そもそもこんな山里、焼いた所で意味が無い、というのは村の者が勝手に言っていることであり、米国の作戦を知っているわけでもない。
爆撃されない保証はどこにもなかったし、作戦でなくとも罷り間違ってあの中の一つでも落ちてきたら、操縦士が誤って投下してしまったら、そう思うだけで生きた心地がしなかった。
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