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潮騒
第14章 終戦 ー崩れ波ー
防空壕は畑の土手に掘った横穴。

普段は農機具を入れたり、雨が降った時に雨宿りする為の穴だった。
扉一つなく、隠れれば空からは見えぬだろうが、目の前に爆弾が落ちれば防ぐものもなく、致命的だった。
だがそれでも、男手のない今、新たに穴を掘ったりすることもできず、そこに隠れるしかなかった。

はつ江が無事かどうか気になって手紙を書いた。
街はどこも空襲に遭い、神戸だけでなく、大阪も、西宮も、見る影もないようだ、とはつ江からの返事が来た。

芦屋の浜手にあるはつ江の家のあたりも、神戸一帯の大規模な空襲は受けたとのことだったが、今のところ幸いなことに家は戦火を免れている、が、空襲がいつ来るかは分からず、助かる保証はない、というところらしかった。
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