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潮騒
第15章 食卓の風景 ー波間ー
鶏小屋にあった卵は全部で三個。三つとも割って厚い卵焼きを焼き、二人前に分けて正一郎と浩二郎の前に置く。
卵は貴重なので、卵焼きはご馳走だった。
子供たちも物欲しそうな顔で卵焼きののった皿を見つめる。啓三などは久々に見る卵焼きに、悲しそうにゴクリと唾を飲み込んだ。

「 お父ちゃんらだけ白飯やし…俺も食べたいなぁ、白飯!」

唇を尖らせる郁男を諌める。

「あのな、お母ちゃんは意地悪してるんやないのよ?お父ちゃんらは、大変な思いして、毎日のご飯もよう食べんとお国の為に頑張っとったん。無事に帰ってきたお祝いなんやから、あんたらとは違うの。」

「お祝いやったら皆で食べたらええやんか! 俺らはいっつも芋と大根入っとって米のが少ないわ!」

口の減らない郁男に苛々と溜息を吐き、

「贅沢言いなさんな!それも食べられへん人がいっぱいいてるんよ!文句があるんやったら食べんでよろしい!」

そう言って聞かせても子供の事、理屈は解るがそれはそれ、と言った様子だった。

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