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潮騒
第15章 食卓の風景 ー波間ー
喜美子はもう十二歳になるから、流石に我儘など言わないが、それでも好物の卵焼きをチラっと見る。
その様子に浩二郎が苦笑し、卵焼きを一切れ喜美子の茶碗に放り込んだ。
「お父ちゃんはもう食べたから、それはお前がお食べ。」
「ええの?お父ちゃん⁉︎」
「あぁ、ええよ。」
相変わらず浩二郎さんは優しいなぁ、それに引き換え、と正一郎を見遣ると、すでに卵焼きは全て腹に納まっている。
やっぱりか…
本当は卵焼きの端っこを郁男と啓三に食べさせようかと悩んだのだが、それでは我が子だけ依怙贔屓するようだし、かと言って喜美子の分も取ると卵焼きが減ってしまう。敢えて正一郎と浩二郎への労いということにしたのだ。
「するいぞ、喜美子!」
「えぇなぁ、きみ姉ちゃん!」
郁男と啓三が口を尖らせると、喜美子が笑って、
「ほんなら啓ちゃんには半分あげるわな。」
と箸で卵焼きを半分に割る。
その様子に浩二郎が苦笑し、卵焼きを一切れ喜美子の茶碗に放り込んだ。
「お父ちゃんはもう食べたから、それはお前がお食べ。」
「ええの?お父ちゃん⁉︎」
「あぁ、ええよ。」
相変わらず浩二郎さんは優しいなぁ、それに引き換え、と正一郎を見遣ると、すでに卵焼きは全て腹に納まっている。
やっぱりか…
本当は卵焼きの端っこを郁男と啓三に食べさせようかと悩んだのだが、それでは我が子だけ依怙贔屓するようだし、かと言って喜美子の分も取ると卵焼きが減ってしまう。敢えて正一郎と浩二郎への労いということにしたのだ。
「するいぞ、喜美子!」
「えぇなぁ、きみ姉ちゃん!」
郁男と啓三が口を尖らせると、喜美子が笑って、
「ほんなら啓ちゃんには半分あげるわな。」
と箸で卵焼きを半分に割る。