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潮騒
第2章 身代わりの花嫁 ー風波ー
正一郎は、ばさりと蚊帳を捲り、ひとり入っていった。
残された菊乃。
「あの…」
どうしたらいいかわからず、小さく声をかけた。
「今日は酔うたからな。もう寝る。」
正一郎は一言残し、布団に寝転がった。
ひとり畳に座りつづけるわけにもいかず、菊乃もおずおずと蚊帳を開け、中を見る。
「何や、入るなら早よ入れ。蚊が入るやろうが!」
寝転んだままの正一郎にどやされ、パサっと蚊帳を下ろした。当然のことながら、蚊帳の中に布団は一組しか敷かれていない。そのど真ん中に正一郎が転がっている。
どうしたらいいかもわからぬまま、正一郎に背を向けるかたちで、そろそろと端っこに身を横たえた。
うずくまるように小さくなり、どうやら今夜は無体な事はされなさそうだ、という妙な安堵感と、これからの不安と心細さに、泣きそうになりながら目を閉じた。
ぎゅっと目を閉じると、やはり涙が眦を伝う感覚があった…
残された菊乃。
「あの…」
どうしたらいいかわからず、小さく声をかけた。
「今日は酔うたからな。もう寝る。」
正一郎は一言残し、布団に寝転がった。
ひとり畳に座りつづけるわけにもいかず、菊乃もおずおずと蚊帳を開け、中を見る。
「何や、入るなら早よ入れ。蚊が入るやろうが!」
寝転んだままの正一郎にどやされ、パサっと蚊帳を下ろした。当然のことながら、蚊帳の中に布団は一組しか敷かれていない。そのど真ん中に正一郎が転がっている。
どうしたらいいかもわからぬまま、正一郎に背を向けるかたちで、そろそろと端っこに身を横たえた。
うずくまるように小さくなり、どうやら今夜は無体な事はされなさそうだ、という妙な安堵感と、これからの不安と心細さに、泣きそうになりながら目を閉じた。
ぎゅっと目を閉じると、やはり涙が眦を伝う感覚があった…