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潮騒
第16章 再会の夜 ー上げ潮ー
菊乃の問いに正一郎は答えない。
菊乃は小さく息を呑み、祈る。

好きや、って、言うて…

正一郎さんの声で。

正一郎さんの言葉で。

お前が好きや、って…



「お前はどうや。」

菊乃の期待を裏切るように、正一郎は問い返してきた。菊乃はキュ、と唇を引き結び、目を閉じる。
そして、口を開いた。

「うち?うちは、好きよ…初めて抱かれた時からずっと…」

「…ふぅん」

興味なさそうな応え。だが、微かに、菊乃の身体を抱く腕に力がこもる。
…あ、嬉しがってる。
菊乃は密かにほくそ笑む。
あと、一歩。

「なぁ、好き?」

正一郎は唇を少し歪め、

「俺が、お前を嫌うとると思うか?」

また問い返しか。目を細め、小さく息を吐いた。

「……そうは、思わんけど…」

いじけるように唇を尖らした。

「なら、それが答えや。それでええやろが」

有無を言わさぬように、正一郎の唇が菊乃のそれを塞ぐ。身体を反転させ、再び組み敷いた。

「もうえぇ。喋るな。俺が聞きたいのはお前のえぇ声や。」

再び乳をまさぐり、力を取り戻した剛直を菊乃の腰に押し付けた。



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