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潮騒
第17章 終章 ー凪ー
その年の春から夏にかけて、兵隊にとられていた村の男たちが続々と復員し、村は徐々に活気を取り戻す。
勿論戦死した者は良太郎だけではないし、帰ってきても手や足を失ったり、まともに働けなくなった者もあった。所属部隊によっては敗戦後、捕虜としてシベリヤに送られた者もあると聞いた。
そうなった者がいつ帰って来られるのかは、誰にもわからなかった。
敗戦後初めての盆を迎えるに当たり、良太郎含む、戦死した兵を一か所に纏め、戦没者の墓を建立する事になった。
遺品のある者、遺骨のある者はそこに埋める、ということに決まったが、後日、良太郎の遺骨として送られてきた小さな木箱の中には、どう見ても骨には見えぬ小石のようなものが数個入っていただけであった。
仕方なくそれを遺骨として埋め、飢えて死んだのであろう良太郎の為に、仏壇には出来るだけ菓子や果物を欠かさず供えた。
菊乃は、正一郎が復員してから一度孕んだが、流産し、その後孕むこともなかった。
勿論戦死した者は良太郎だけではないし、帰ってきても手や足を失ったり、まともに働けなくなった者もあった。所属部隊によっては敗戦後、捕虜としてシベリヤに送られた者もあると聞いた。
そうなった者がいつ帰って来られるのかは、誰にもわからなかった。
敗戦後初めての盆を迎えるに当たり、良太郎含む、戦死した兵を一か所に纏め、戦没者の墓を建立する事になった。
遺品のある者、遺骨のある者はそこに埋める、ということに決まったが、後日、良太郎の遺骨として送られてきた小さな木箱の中には、どう見ても骨には見えぬ小石のようなものが数個入っていただけであった。
仕方なくそれを遺骨として埋め、飢えて死んだのであろう良太郎の為に、仏壇には出来るだけ菓子や果物を欠かさず供えた。
菊乃は、正一郎が復員してから一度孕んだが、流産し、その後孕むこともなかった。