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潮騒
第4章 嫁 ー細波ー
文句があるなら自分でせぇ!
心の中で舌を出し、義父母の手前、殊勝に頭を下げてみせる。
翌日から、正一郎の着物のみ、水につけてざぶざぶと濡らしただけで、洗わず絞らず、水が滴る状態で干した。
洗ったことにはならないが、水につければ、水の重みで生地が伸びるからピンとアイロンを当てたようになる。
ピンと皺なく張っている、というだけで殆ど汚れの落ちていない着物を、満足気に着る正一郎を見て、菊乃は胸のすく思いでニヤリと笑った。
そのうち汚れが落ちていないことに気づくかもしれないが、その時はその時だ。
洗濯を終えれば慌ただしく昼飯の支度をし、全員分の膳を用意して、最後に菊乃が箸をつける頃には正一郎は食べ終わって席を立つ。
かき込むように飯を済ませて膳を片付けたら、畑仕事にも出なければならんのに、合間にヨシに部屋が汚いと叱られ、慌ててハタキと箒を持ち出して掃除をし、掃除をしている最中にチヨが障子の桟を指で拭って、埃を掬っては掃除がなってないと嫌味を言ってくる。
ヨシとチヨは普段から仲が良かったが、殊に人の陰口を叩く時と、菊乃をいびる時の息の合いようときたら、敵ながら天晴とさえ思うほどだった。
心の中で舌を出し、義父母の手前、殊勝に頭を下げてみせる。
翌日から、正一郎の着物のみ、水につけてざぶざぶと濡らしただけで、洗わず絞らず、水が滴る状態で干した。
洗ったことにはならないが、水につければ、水の重みで生地が伸びるからピンとアイロンを当てたようになる。
ピンと皺なく張っている、というだけで殆ど汚れの落ちていない着物を、満足気に着る正一郎を見て、菊乃は胸のすく思いでニヤリと笑った。
そのうち汚れが落ちていないことに気づくかもしれないが、その時はその時だ。
洗濯を終えれば慌ただしく昼飯の支度をし、全員分の膳を用意して、最後に菊乃が箸をつける頃には正一郎は食べ終わって席を立つ。
かき込むように飯を済ませて膳を片付けたら、畑仕事にも出なければならんのに、合間にヨシに部屋が汚いと叱られ、慌ててハタキと箒を持ち出して掃除をし、掃除をしている最中にチヨが障子の桟を指で拭って、埃を掬っては掃除がなってないと嫌味を言ってくる。
ヨシとチヨは普段から仲が良かったが、殊に人の陰口を叩く時と、菊乃をいびる時の息の合いようときたら、敵ながら天晴とさえ思うほどだった。