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潮騒
第5章 初夜 ー満潮ー
正一郎は、踞ったまま、立ち上がる気配のない菊乃の腕を掴み、無理矢理立たせようとした。
「離して!」
「早よ立たんか!この阿呆が!」
無理矢理引っ張り上げると前襟を掴まれる。
身体の大きな正一郎に胸ぐらを掴まれると、小柄な菊乃の足は地面から離れ、首が締まりかけた。
苦しい。そして殴られる、と咄嗟に思った。
殴られる、と思った瞬間、ぷつ。と何かが切れる音がした。
ような気がした。
「何や阿呆て!何でうちがあんたに阿呆呼ばわりされなあかんの⁉︎うちが何したん?何でうちばっかりこんな目に遭うん?だいたい夫、夫て言うけどな、あんたがうちに何してくれたん⁉︎嫁のひとりも満足させられんで何が夫や、偉そうに!そない偉そうにすんねやったらうちを笑わせてからにして!そんなことも出来んで威張んなこのボケが!」
苦しい息の中、捲し立てた菊乃の剣幕に、正一郎は度肝を抜かれたのか、ふっと手を緩めた。
菊乃は解放されたが、むせ込んだ。
「離して!」
「早よ立たんか!この阿呆が!」
無理矢理引っ張り上げると前襟を掴まれる。
身体の大きな正一郎に胸ぐらを掴まれると、小柄な菊乃の足は地面から離れ、首が締まりかけた。
苦しい。そして殴られる、と咄嗟に思った。
殴られる、と思った瞬間、ぷつ。と何かが切れる音がした。
ような気がした。
「何や阿呆て!何でうちがあんたに阿呆呼ばわりされなあかんの⁉︎うちが何したん?何でうちばっかりこんな目に遭うん?だいたい夫、夫て言うけどな、あんたがうちに何してくれたん⁉︎嫁のひとりも満足させられんで何が夫や、偉そうに!そない偉そうにすんねやったらうちを笑わせてからにして!そんなことも出来んで威張んなこのボケが!」
苦しい息の中、捲し立てた菊乃の剣幕に、正一郎は度肝を抜かれたのか、ふっと手を緩めた。
菊乃は解放されたが、むせ込んだ。