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潮騒
第8章 正一郎の過去 ー引潮ー
ざわざわと、身体の奥から波が押し寄せる。

沖の細波が、浅瀬に寄るにつれ、大きくなるように。

小さく見えたそれは、近くに来ると頭で感じ、想定するよりも遥かに大きい。

乗り越えられるとタカを括っていたらあっというに飲み込まれる。

その快感は、海そのものだった。



そして正一郎は、その細波に見える大波を引き起こす術を知っている。

「あ〜ッ……….」

甲高い、あられもない声をあげ、菊乃の意識は波の中に消えた。

ギュッと締まった貝の口に搾り出された正一郎の欲が、トロリと吐き出される。

少し泡立ったそれは、波間に見える泡沫のようだった…

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