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潮騒
第9章 正一郎 不在の夏 ー大時化ー
それから程なくして、耕太郎が病に倒れる。
入院することになり、金が要るということで、正一郎は再び理髪師として出稼ぎに出ることになった。
その昔出稼ぎに行った時は、師匠について外国に行ったそうだ。
亜細亜の島国で、暑い所だった、という話だったが、国名を聞いてもそれが何処にある国なのか、菊乃にはさっぱりわからなかった。
今回は、大阪で産婆の免状をとった実姉のはつ江に手紙を書いて相談したら、芦屋に家を買ったから宿にしたらええ、と快諾してくれたため、そこを拠点に神戸で働く予定だった。
出稼ぎと言えば、住み込み労働が出来れば良いが、安宿であっても日々の宿代を払いながらの仕事はなかなか効率が悪い。親戚を頼れるのはありがたい話だった。
それに、嫁の姉の家となれば、真逆女を連れ込むこともなかろうし、見張り役付きの良い物件である。
入院することになり、金が要るということで、正一郎は再び理髪師として出稼ぎに出ることになった。
その昔出稼ぎに行った時は、師匠について外国に行ったそうだ。
亜細亜の島国で、暑い所だった、という話だったが、国名を聞いてもそれが何処にある国なのか、菊乃にはさっぱりわからなかった。
今回は、大阪で産婆の免状をとった実姉のはつ江に手紙を書いて相談したら、芦屋に家を買ったから宿にしたらええ、と快諾してくれたため、そこを拠点に神戸で働く予定だった。
出稼ぎと言えば、住み込み労働が出来れば良いが、安宿であっても日々の宿代を払いながらの仕事はなかなか効率が悪い。親戚を頼れるのはありがたい話だった。
それに、嫁の姉の家となれば、真逆女を連れ込むこともなかろうし、見張り役付きの良い物件である。