この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
潮騒
第10章 出産 ー高波ー
赤ん坊は、弱々しくも必死に生きようとしているようだった。
一度目よりも熱めの湯で洗い、乾いた手ぬぐいや着物で包み、菊乃に抱かせる。
タツノの手を借りて、菊乃は赤ん坊を胸に抱いた。
「男の子?女の子?」
「あれ、男の子と違たかな…」
タツノが眉根を寄せると、
「男や!立派なモン付いたぁる!」
小吉がニヤっと笑う。
「生きて…元気で、大きなって…お願いや…郁男(いくお)に、しよかな…」
「ええんと違う?」
「おぉ、ええ名前やの!」
「まだ、皆に相談せなあかんけど…」
「あんなん親なんて言われんわ! 何なんあの婆ァ!」
部屋の奥を睨んで舌を出すタツノに、
「止めとけタツノ。あのおばさん地獄耳やけの。聞こえんぞ。」
勝二がかぶりを振ってタツノを諌め、くわばらくわばら、と呟いた。
一度目よりも熱めの湯で洗い、乾いた手ぬぐいや着物で包み、菊乃に抱かせる。
タツノの手を借りて、菊乃は赤ん坊を胸に抱いた。
「男の子?女の子?」
「あれ、男の子と違たかな…」
タツノが眉根を寄せると、
「男や!立派なモン付いたぁる!」
小吉がニヤっと笑う。
「生きて…元気で、大きなって…お願いや…郁男(いくお)に、しよかな…」
「ええんと違う?」
「おぉ、ええ名前やの!」
「まだ、皆に相談せなあかんけど…」
「あんなん親なんて言われんわ! 何なんあの婆ァ!」
部屋の奥を睨んで舌を出すタツノに、
「止めとけタツノ。あのおばさん地獄耳やけの。聞こえんぞ。」
勝二がかぶりを振ってタツノを諌め、くわばらくわばら、と呟いた。