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3週間の情事
第5章 4日目
「山之内さん、さっきからスマホばかり見てどうしたんですか?」
「え、うん……ちょっとね」
「何ですか~? 山之内さんにしては、珍しく歯切れが悪いですね~? もしかして、もしかして~?」
「変な憶測するなよ。ほら、次の取引先に行くぞ!」
「ちぇ~。とうとう山之内さんも年貢の納め時だと思ったのにな~」
「石月……その言葉の使い方、気を付けろよ」
「え!? 違いますか?」
「あとで、検索しとけよ。意味が分かるまで使うなよ」
「は、はい! 分かりました!」
ちょっかいを掛けてきた営業部の後輩の石月に俺は小さく苦笑いを浮かべて、スマホを胸の内ポケットにしまった。
さっきのやり取りの発端は、確かに俺がスマホを気にし過ぎていたからだ。
今日は、朝から営業先周りで、帰りもきっと会社には戻らないで直帰になるだろう。
昨日の時点で分かっていたことだから、空森さんには今日は社内でも会うことが出来ないだろうとは伝えてある。
外出が多い営業所では、こんなの日常で気にしたことなかったけど、空森さんとの約束――――『三週間だけの恋人役』を引き受けた途端、会えないのが凄く気になってしまった。