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3週間の情事
第5章 4日目
気になる一番の理由は、『時間』だ。


変な話、俺たちには時間がない――――。


たった『3週間』で、空森さんの母親に『恋人』と思い込ませなければならないのだから。


お母さんを騙すことに罪悪感はあるけれど、引き受けたからには今俺が出来ることを精一杯やるしかないだろう。


昨晩の『初デート』という名の空森さんとの食事は、正直居心地が良かった。


多分、空森さんの純粋な性格に、自分の重たかった気持ちが浄化される気分だったのかもしれない。


昨晩の空森さんとのやり取りが、頭の中に蘇る――――。


「え……じゃぁ、コーヒーもご一緒できないのでしょうか?」


「はい。明日は結構回る所が多いので、取引先で後輩と待ち合わせしているくらいなんです」


「そうなんですか……。やはり営業部のお仕事は大変ですよね。営業部の皆様には感謝しかありません」


両手を胸元に合わせて伏目がちにしみじみとそう言うと同時に、少し寂しそうにも聞こえる空森さんの声に、胸が少し痛んだ。



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