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わけありっ、SS集!
第4章 ままごと遊び

ーー耳元で鳴り響く目覚まし時計。揺らめくカーテンの隙間から差し込む陽光。トントントントンまな板を叩くリズミカルな音と、漂ってくる朝食の匂い。
匂いに釣られて振り向いた先、エプロン姿の母の背中が見える。
母は決まってそのタイミングで振り向き、言う。
「おはよう、やっとお目覚め? 早く顔を洗って、着替えておいで。朝ごはんができたよ。朝食は一日の基本だからね。何があっても食べなきゃダメよ」
母の口癖だった。昼と夜は、多少乱れても構わない。だけど朝だけは、しっかり、バランスよくたくさん食べなさいって。
白飯と味噌汁。毎日の朝食で、この二つだけは母は絶対に欠かしたことがなかった。
俺が十四歳になったばかりの六月。交通事故で死ぬまで、記憶の限り一度もーー。

