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わけありっ、SS集!
第10章 少年

「俺はこう見えて、少年の心を持っているんだ」

 社会科の先生が、授業中に突然そんなことを言った。
 一斉にクラスがしぃんと静まり返る。
 一体なんの冗談だろうと私も思った。
 もうすでに四十半ばのその先生は、中年太りでぷよぷよしたお腹を揺らし、くたびれた背広を身にまとい、いつも淡々と授業をしている。
 白髪混じりのぼさぼさの髪や張りのない皮膚に埋もれた目からは、あまり精気が感じられなかった。
 先生のキャラも見た目も、少年には見えない。どちらかと言えば、世の中に疲れたサラリーマンという風貌をしていた。
 異様な空気が流れる中、壇上でチョークを手に解説をしていた先生は自分の発言がすべったことを知り、気まずげにまた黒板に視線を戻した。
 ――だけれど私は見つけてしまったのだ。そんな先生の、『少年らしい』秘密を。
 数日後、集めた提出物を届けに職員室の先生の席に行くと、出席簿の隅に鉛筆で落書きしている先生の姿があった。
 ……水着姿のロリっぽい顔の少女を。

「あのー」
「うおっ」
「何ですかその絵……」

 先生は慌てて両手で出席簿を隠した。

「こ、これはなんでもない! ただの暇つぶしだ……っ」

 そう言って、顔を真っ赤に染める先生の姿は確かに、いたずらが見つかり慌てる少年のようだった。
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