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第8章 愛の痛み

　貴女はこの晴れ晴れとした日に由緒正しい神社で白無垢姿で神に愛を誓い、一流ホテルで披露宴を挙げ、純白のドレスに身を包み、祝福される花嫁となる。
夜はそのホテルで夫と愛を契り、妻となる。



　私の心は、黒のリクルートスーツで貴女との永遠の愛に喪す。



　こんな日は無理に笑わない。
目の前のパソコンを開き、仕事を黙々とこなしていた。
油断していたら、目頭が熱くなり、画面が歪んで見えなくなる程の涙が溢れてしまう。
グッと下唇を噛み締め、留まらせた。


　「川上さん、川上さん」
　
　軽く肩を叩かれ、やっと呼ばれていた事に気づいた。


　「川上さんらしくないね。
ボーッとして。
心、ここにあらずって感じ」

　「あっ、すみません、白石さん」

　「もう、とっくに退社時間過ぎてるよ。
何か急ぎ？
手伝おうか？」

　「いえ、もう帰ります」

　「うん、お疲れ様」

　パソコンの電源を落とし、窓辺に視線を向けると、日は落ちていて夜を迎えようとしていた。
長かった一日がもうすぐ終わりを告げる事を確認した。

　我慢していた涙が、一瞬の油断で頬を伝い出した。


　「川上さん？」